涙の雨と君の傘


夏休みに入った。

アイツとは、遊ぶ約束をしていない。


来年は受験生だし、この夏休みにプール行ったり花火したり、色々やりたいねって言ったけど、

アイツは曖昧な返事しかしてくれなかった。


もうすでに、他の女の子と約束をしているのかもしれない。


嫌だな、お祭りで鉢合わせとかしたら。

この夏は引きこもりになりそうだ。



そういえば、笹原はどうしているだろう。


終業式の日に夏休みはどうするのか聞いたら、バイト三昧だって言っていた。

来年は受験でバイトもあまりできないだろうから、いまのうちに稼いでおくんだって。

なんて真面目で、がんばり屋だろうか。



「ごはん、ちゃんと食べてんのかなー」


笹原がひょろひょろなのは、食生活のせいだと思う。

昼はいつも菓子パンばっかり食べてるし、

料理してるのか聞いたら、近所のスーパーの惣菜は美味しい、というダメダメな答えが返ってきた。


でも、そうだよね。

笹原は成績が良いから勉強もしっかりやってるんだろうし、それにバイトをかけ持ちまでして、そのうえ家事までできちゃったら、完璧人間になってしまう。



夏休み中、一回くらい連絡してみようかな。

栄養失調で倒れてたりしたらこわいし。


友人として、様子を見に行ってもおかしくないはずだ。



いつにしようかな。

急にそわそわして、カレンダーをめくる。


アイツのことを考えるとイライラするし疲れるから、どうせなら笹原のことを考えようと思った。

その方がずっと、前向きになれるから。