涙の雨と君の傘

親戚に引き取られたけれど、気まずくて一人暮らしを始めたそうだ。

両親の保険金で大学を卒業するまでの学費や生活費はまかなえるけど、もったいないし、何があるかわからないからと、バイトをしているらしい。


えらい、と思ったけど口にはしてない。

代わりに、親のお金で色んな女と遊び歩いてるアイツに、ちょっとは見習ってほしいと言ったら、困った顔をされてしまった。


「そういえば、アイツに笹原とのこと聞かれたよ。お前、あの笹原と仲良いんだって?って」

「へえ?」

「もしかしてヤキモチ?とか思ってさ。仲良いって言っても、普通に話してるだけだよって答えたら、アイツ何て言ったと思う?」

「浮気じゃないだろうな、とか?」

「ブブー。正解は“ま、俺の方がかっこいいしモテるしな”でしたー。まじで殴ってやろうかと思ったわ」


笹原は小さく笑って、なんで?と聞いてくる。


「だって笹原のが100倍かっこいいし。アイツがモテんのは、軽くてチャラチャラしてるから女の子が寄ってってるだけだもん」

「……へー」

「ナルシストもあそこまでいくとギャグでしかないよね」


笹原はスマホをいじりながら、またくすりと笑った。


「でも、名瀬にとっては、彼氏の方がかっこいいんでしょ」

「はあっ? そんなわけないじゃん」


唇を尖らせて文句を言うと、余計に笑われた。

最近笹原はよく笑う。