涙の雨と君の傘

笹原はちらりと私を見ただけで、黙って靴を履き替えている。

やっぱり昨日のことは夢だったのかな。



「……何してるの」



「えっ」

「そんなとこ突っ立って」


今日は雨降ってないよと、不思議そうに笹原に言われて、夢じゃなかったかと少しほっとした。


「あはは。今日はね、アイツ待ってんの。映画行く約束してて」


映画に全然興味がなくて、私が誘ってもいつも断ってくるくせに。


浮気のお詫び、とはアイツは言わなかったけど。

私の機嫌をとって、うやむやにしようとしてるんだろう。


わかりやすくて、浅はか。

なのに映画に行ってやる私って、優しいのかバカなのか。


「んで、アイツがなかなか来なくてこんなとこ突っ立ってるわけです」

「……名瀬の彼氏って、D組の人だっけ」

「そう。派手で目立つ奴」

「ふーん……」

「……もしかして、女とでも一緒にいた?」


嫌な予感に聞けば、笹原はすいと視線を反らしただけで何も言わない。

言わないけど、正直だ。


「はは」


呆れも怒りも越えて、笑ってしまった。

何やってんだろ、私。