起きれるようになってから

山南に借りたままの本を読んだ


「君ちゃん 具合どお?」

「丁度ええとこに明ちゃん!!
山南はんに借りた本を一緒に返しに行こ?」

「ええよ
長い風邪やったねぇ
君ちゃんがおらんと、さみしかったわ」


風邪で寝込んだことになっていた


「堪忍!もう、この通り元気やで!?」

子供のように飛び跳ねてみせた

「もう!!年頃の娘のすることやないわ!」


明るく振る舞った

笑顔を絶やさず、気を緩めず


(油断したら、泣きそうや…
泣いたって、寿は帰ってこん…)











新選組 屯所にて


「わざわざありがとうございます
君菊の趣向がわかりましたので
次の本を用意してましたよ
はい これは、差し上げます」

「ええんどすか?こんなにたくさんに!」

「君ちゃん、よかったね!!」

「うん!おおきに!!山南はん!!」







翌日





山南が脱走した






沖田に連れられ、屯所に戻った


土方は


「山南敬助 切腹を申しつける」

「慎んでお受け致します」





それを聞いた永倉が明里のもとへ


「おい!!ついてこい!!」



仕事中の明里を強引に連れ出す



騒ぎに気づいた君菊も二人の後を追う




「山南はん!!うちも…連れて行って!!」

「あ……明里」

「山南はん……」

「お嫁に行きなさい
縁談があることは、知っているよ
どうか、幸せに……」

「いややーー!!!」





山南は、すっきりした表情で

切腹した




「人殺し!!」




明里が土方に向かって言った


明里の後ろで君菊は、ゾクッとした

自分に言われている気がした


「うちも… 斬っておくれやす!!!」


君菊が明里の肩を抱いた


「明ちゃん 山南はんは、幸せになりって
言うてはったよ
うちは、山南はんの願いを叶えて欲しい
明ちゃんには、幸せになって欲しい」


「うわぁーーーーん」



明里を抱きしめて、顔をあげると

皆、泣いていた


(泣いてへんのは、うちだけやな……)