「あんたねぇ、『にゃあ』じゃないよ。あんたのせいで骨折して入院するハメになったんだからね?」
わかっているのか、いないのか、雨は私の右足のギブスに柔らかな体をすり付けて
にゃー。
まるで謝っているかのような、甘えた小さな鳴き声。
にゃー、じゃないよ。全治3ヶ月なんだからね。
大会も全部ダメになったんだからね。
ため息をついて、足元の雨を見下ろした。
灰色の艶のある毛皮に青い綺麗な瞳。
本当に、雨という名前がぴったりの猫。
本当はその柔らかそうな体をなでてみたかったけど、ギブスつきの足じゃうまくしゃがむこともできずに、立ったままちぎった魚肉ソーセージを雨の前に放り投げた。
はぐはぐ、と
鼻息を荒くして夢中で魚肉ソーセージを食べる姿は、なんだか愛しかった。
まぁ、私は骨折したけど、あんたにケガがなくてよかったか。
万が一あの時私が転ばずに、雨を自転車で引いてケガをさせてしまっていたら、後味悪いしね。


