「あ! 猫ちゃんだー」
「可愛いー」
見ると灰色の綺麗な猫が、グラウンドに入り込んでいた。
「あ、雨」
にゃおん。
私の顔を見ると、得意気にしっぽをぴん、と伸ばして優雅な足取りで歩いてくる。
「どうしたの? 学校の中に入ってきたら先生に怒られちゃうよ」
雨を見るのは久しぶりだな、と思いながらしゃがんでそのしなやかな体をなでると
にゃ―。
雨が鳴いたと同時に、強い風が吹いた。
「あ!」
ポケットにお守りのようにいつも入れていた一枚の紙切れが、強い風に吹かれて空に舞い上がった。
あ、あの宝くじが────
そう思いながら風に飛ばされる宝くじを目で追うと、病院の窓が目に入った。
あの4階の窓。
いつも、ユウがグラウンドを見下ろしていた窓。
宝くじはどこまでも高く舞い上がり、風に吹かれて飛んでいく。
『世界は奇跡で溢れてる』
ユウ、本当だね。
この世界は奇跡でいっぱいだ。


