いつの間に?
さっきまでは、だれもいなかったはずなのに。

こんな静かな廊下で、足跡も物音もたてずに、どうやってここに来たんだろう。


「……神様なんていないよ」

独り言を聞かれていたのが恥ずかしくて、私はぶっきらぼうに言うと顔をそらした。

「そう? ぼくはいると思うよ。だって、世界は奇跡で溢れてる」



なに言ってるの。
奇跡なんて溢れてるワケがないじゃない。

男の子は、怪訝な顔をする私を気にもとめずに、隣に並び窓の外を眺める。
私は隣に並ぶ男の子のその横顔を、こっそり観察した。



……この子も、入院してるのかな。


すごく白い肌。
色素の薄い髪。
華奢な手足。

どこか儚げな雰囲気の男の子。


きっと私と歳は変わらないんだろうけど
なんだか、不思議な子。