「あはは。ごめん、ごめん。全部じゃないよ、最後だけ嘘」
怒る私を宥めるように、ユウはごめんねと可愛く首を傾げてみせる。
「本当は当たったかどうかわからないんだ」
「どうして?」
「宝くじの抽選結果が分かる前に、奇跡の男は死んだ。病気でね、もう長くなかったんだ」
ゆっくりと『死』という言葉が胸を押し潰す。
言葉をなくした私に、ユウは優しく微笑んだ。
「最後までかっこよかったんだよ。この宝くじは棺桶に入れて一緒に燃やしてもらうんだって、あの世でゆっくり抽選結果を調べるのが楽しみだって笑って逝った」
「……奇跡の男なのに、死んじゃうんだ」
私がぽつり、とつぶやくと
「仕方ないよ」
とユウが笑った。
「人はいつかは必ず死んじゃうんだから、奇跡の男だって死ぬよ」
仕方ない。
そう、わかってるのに、死を語るのはどうしてこんなに息苦しいんだろう。