そんなことを思いながら、雨の小さな背中を眺めていると、聞き覚えのある声が足音と一緒に近づいてきた。
「あかり、元気かなぁ。今年のインハイに命かけてたからへこんでるだろうね」
陸上部の友達の声。
きっと、学校の帰りにお見舞いに来てくれたんだ。
私はなんとなく気まずくて木の影に隠れた。
「足首骨折なんて、可哀想。しばらく運動できないし、フォーム崩れてタイム落ちたりするし」
「あー、そういえば骨折してから調子悪くして陸上部辞めちゃった先輩もいたよね」
「いたね。たしか疲労骨折でクセになっちゃったんだよね……」
私が木の影で話を聞いているのも知らず、そんな話題を口にして頷きあうふたり。
可哀想、なんて言いながら、口調も表情どこか人の不幸を楽しんでいるように見えてしまう。
涙が出そうになって、とっさに歯をくいしばってうつむいた。
そう感じてしまうのは、私の被害妄想だってわかってる。
ふたりに、悪気なんてないのはわかってる。
ただの世間話だって、わかってる。
でも、どうしても割り切れないよ。