──紛れもなく、 さっき頭に浮かべてた“彼”。 どうしようもなくて、目を見開く。 彼が、息を整えるために下げていた顔を、上げて。 至近距離で初めて目線がぶつかった。 推定、15センチ。 彼は、15センチの距離の中。 私の震える心臓も、知らないで。 「───これっ、すよね?」 緊張と、整えきれていない呼吸の苦しさを顔に浮かべながら。 でも、はにかんだ笑顔で、言った。