【短】30秒後、星散るセカイ





その後は、まるでスローモーション。



え、なんて振り返ろうと思ったけどそう早くは反応出来なくて。




耳に届く、荒い呼吸。




真横にいるボタンを押したその人から香る、柔軟剤の香りに、まさかなんて思いながら。


いや、でも、そんな都合のいい事あるわけないよなぁなんて思いながら。





ボタンに伸ばす指は止まらなくて。





骨ばったその人の、人差し指に。


私の人差し指が、重なった。





遅れて、ピッと電子音が鳴る。




───人生で、一番長く感じた1秒間だったと思う。




電子音で、スローモーションみたいに感じていた感覚が元に戻った。




私の顔も、遅れてその人の方にバッと向く。




──15センチほどの近さに、
心臓が震えた。




柔らかそうな、黒い髪。



視界に捉えたその人は、ぶつかったさっきの男の子でも、それ以外の人でもなくて。