この曖昧な心の中をハッキリさせるためには。
勇気をだして、話しかけてみなきゃいけないことなんて。
……わかってるよ。
──彼から話しかけてきてくれるかも、なんて。
そんな都合いいこと起こるわけないなんて。
「わかってるよ」
遠くに聞こえる生徒の賑やかな声をBGMにして、私のそんな声が廊下にポツリと響いた。
…わかってる。
でも、どうしても、期待する。
だからやっぱり自分から動けない、意気地なし。
遠くの方から、誰かが走ってくる足音が聞こえた。
上履きの擦れる音が、だんだんと近づく。
気にせず、意気地なしな自分を振り切るように背伸びをして、いつものそれ、ナタデココヨーグルトのボタンに指を伸ばした。
けれど、走っていた人の足音がキュッとすぐ近くで止まって。
──ダンッ!!
その人の手が私の目の前を通過して、ナタデココヨーグルトのボタンを一足先に押した。


