【短】30秒後、星散るセカイ




この曖昧な心の中をハッキリさせるためには。



勇気をだして、話しかけてみなきゃいけないことなんて。


……わかってるよ。





──彼から話しかけてきてくれるかも、なんて。



そんな都合いいこと起こるわけないなんて。



「わかってるよ」




遠くに聞こえる生徒の賑やかな声をBGMにして、私のそんな声が廊下にポツリと響いた。




…わかってる。


でも、どうしても、期待する。


だからやっぱり自分から動けない、意気地なし。




遠くの方から、誰かが走ってくる足音が聞こえた。



上履きの擦れる音が、だんだんと近づく。




気にせず、意気地なしな自分を振り切るように背伸びをして、いつものそれ、ナタデココヨーグルトのボタンに指を伸ばした。





けれど、走っていた人の足音がキュッとすぐ近くで止まって。










──ダンッ!!



その人の手が私の目の前を通過して、ナタデココヨーグルトのボタンを一足先に押した。