無意識に期待して、無意識に彼を探してしまう。
別に意味なんかなくて、ただなんとなく、なのか。
それとも私が彼を────。
…なんて。
どっちにしても。
胸に広がる、モヤモヤとハッキリしない、淡く曖昧な気持ちは、無意識に私に彼を探させる。
そして、不思議なくらい。
彼がいれば、どうしてもどうやったって、私は彼をすぐに見つけられてしまう。
それは彼が私を見つめてるからなのか。
私が彼を────。
そこまで考えて、目当ての自動販売機の前で足を止めた。
手に握った2枚の百円玉を穴に入れる。
───彼と目が合うだけで、無意識に揺れる心の中も。
チャリン。
───彼が私を見つめる理由も。
チャリン。
───ハッキリさせたいけれど。
話しかける勇気なんて、てんで出ない。
ただ彼と目があった入学式のあの日から、どちらともなく目線を合わせてそらすだけ。
───…彼が私の事を好きなんじゃないか、なんて自意識過剰に考えるだけ。
彼の顔を無意識に頭に浮かべながら、光った自動販売機のボタンに目線を滑らせた。


