いつもと変わらない、お昼休み。
──の、ハズだった、30秒前。
少し離れた自動販売機で、いつも通りのお気に入りの缶ジュースを買うために。
膝上の制服のスカートと胸までの少し傷んだ髪を揺らして、私は廊下を歩いていた。
ふわりと吹いた風は、窓の外に咲く桜の花びらを一枚、廊下に落としていった。
すれ違う新入生は、まだどことなくぎこちない表情で。
去年の私もあんなだったなぁ、なんてこっそり笑いを溢す。
高校受験が終わってやっと楽しい高校生活だーと思ったのに予想以上に大変だったあの時を頭に浮かべつつ、ほんの少し、無意識に、そんな新入生の中に彼を探した。