「どうしても、こいつがハルに謝りたいって言ってきかなくてな」



「謝ってもらうことなんて、ありませんけど」



そっけなく答える。




晋平さんが連れてきたのはMC RUKI(エムシー ルキ)。



主に都内で活動するラッパーで、数年前、俺の曲を盗んで堂々とクラブで披露していた男だった。




「俺たち、友達じゃないっすか」



眉をひそめたくなるような歪んだ笑みで、馴れ馴れしく俺に右手を差し出すルキ。



その手を払うと、ルキの頬がピクッと痙攣した。



けど、またすぐ笑みを貼り付けて言った。



「あの時は悪かった。ほんの出来心だったんだ。
ほら、俺も若かったし。もうずっと昔のことだし、許してくださいよ」



本気で謝る気があるのか、ないのか。



ヘラヘラと笑うルキに厳しい目を向ける。



晋平さんは、意地悪な顔で俺を見ている。



そんな俺達のまとう空気に気づくことなく、ルキは続けて最高に無神経な言葉を吐いた。