ソロとして初の全国ツアーが始まる前日、晋平さんに呼び出された。



待ち合わせ場所は、昔、よく晋平さんに連れてってもらっていた、カフェが併設されたレコード屋。



レンガ造りのレトロな建物のドアをくぐると、カランと硬質なベルの音がした。





「悪いな。忙しいとこ呼び出して」



片手を上げてそう言った晋平さんは、全く悪びれていない。



「ふー」と呆れたため息を履き、、晋平さんの目の前の椅子に座ると、



「久しぶりっす」



晋平さんの隣に座る、キャップを目深に被った大柄な男が、萎縮するようにペコペコと頭を下げた。



無言でそいつを一瞥すると、そいつは卑屈な笑みを浮かべた。