好きなのは七倉さんだけ。
菅君に対して恋愛感情はない。
それなのに間近で見る、透き通るように整った菅君の顔にドキドキする。
そして思う。
もし七倉さんに出会っていなかったら、きっと菅君に恋をしていたんだろうなって。
まあ『もし』なんてこと、考えても仕方ないし、菅君は亜理沙の彼氏だけど。
頭の中で余計なことを考えていると、
「なに考えてるの?」
菅君が悪戯っ子みたいな目で私を見た。
「あ、いや。あんまり近づかないで。心臓に悪いから」
「心臓に悪いって、何で?顔、赤いよ」
どこもでも私の反応を面白がっている菅君の体を両手で押し返すと、菅君はクスクスと笑った。


