講義が終わって部室に向かう途中、横峰さんを見かけた。
横峰さんは見たことのない男の人と一緒だった。
工事現場の作業着姿で、茶色く脱色した髪には所々黒髪が混ざってる。
横峰さんより少し年上に見える、目つきの鋭い男の人。
「会わないって言ったでしょ」
そう言った横峰さんの腕を掴む男の人は、鬼気迫る顔で訴える。
「今の俺達には何の障害もない。やり直そう?お前がいれば、俺はもう一度頑張れる」
「無理よ。二度と来ないで!」
横峰さんの言葉に、男の人はぐっと歯を食いしばる。そして悔しさを振り切るように言った。
「俺には玲しかいない。玲だってそうだろ?今でも好きなんだろ?俺のこと」
横峰さんは男の人から顔を逸らすように俯いた。
「私があなたに恋したことって、そんなに悪いことだったの?あの時。私が一番苦しいとき、あなたは私を捨てていなくなったのに。どうして今更、会いに来るの?」
横峰さんの言葉に、男の人が黙り込む。
「私は懸命にテニスをするあなたが好きだった。今のあなたに興味はないわ。帰って」


