J-Hiphop村はメジャーアーティストを嫌う。
晋平さんはアングラからメジャーに行って嫌われた。
俺はメジャーからアングラに来て嫌われた。
俺はSoul Louversのメンバーだってことを隠していたときは風当たりは悪くなかった。
けど俺が七倉ハルだってバレてからは、バトルをする度に「アイドル死ね」なんて言葉、腐るほど浴びせられた。
完全なアウェーだからこそ、こいつらの前で勝って黙らせてやる。そう思った。
だから、さっきの鬼人みたいな晋平さんの心境を、俺は誰よりも理解できる。
「相変わらず、えぐい攻め方をしますね」
俺の言葉に、楽しそうに目を細める晋平さん。
「次こそ、俺とバトルしようぜ」
グラスに入った酒を、喉を鳴らして飲む晋平さん。
人で溢れる店内で、俺たちの周りだけ誰もいない。
俺の場合、バトルの時にはヤジを飛ばされても、それでもバトルが終われば誰かしらと話しながら飲んでいる。
薄暗い店内、晋平さんの横顔を見る。
孤高の王者は、誰よりも孤独なのかもしれない。


