それから大して月日が経つことなく、都内のクラブで晋平さんと再会した。



DJブースの前にある、客席との段差、わずか10センチのささやかなステージ。



そこにさっそうと現れた晋平さんに、観客は「Wack MC!」とヤジを飛ばす。



元々、アングラな世界で活動をしていた晋平さんは、このままじゃ一生音楽で食っていけないと感じて、どこまでもPopなHiphopの楽曲を作って大成功した。



当時。いや今もだけど。全国区の地上波で日本人が歌うHiphopが流れるなんてことは稀で。



そんな中、晋平さんの曲はCMソングに起用され、音楽番組やバラエティーにも頻繁に呼ばれた。



晋平さんの曲は、常に音楽チャートの上位にいた。



けど世間に媚びるような耳障りの言い晋平さんの曲は、J-Hiphop村と揶揄される保守的な日本のHiphop界から猛烈な批判と反感を買った。



裏切り者のレッテルを張られて、お前はもう仲間じゃないとはじき出された。



顔と名前が売れて有名になった晋平さんは、閉鎖的なJ-Hiphop界を見限った。



俺の目にはそう映っていた。