リズム。韻。心に残る言葉の数々。



何よりも圧倒的な差は、七倉さんのパフォーマンス力。



対戦相手も下手じゃない。



見覚えのある人で、MCバトルで何度か優勝したことがある人。



それでも七倉さんの眩さの元、霞んで見える。



ラップの上手さだけじゃなく、手の動き。足の動きひとつ。



どの瞬間を切り取っても、七倉さんは完ぺきで。



吸い込まれるように、自然とその姿を目で追ってしまう。



こんなステージとも呼べないような小さな場所で、暑苦しい男の人たちのヤジも跳ね返して、



七倉さんは、誰よりも力強く輝いていた。



「七倉の勝ちだな」



いつの間に隣にいたのか、兄が言った。



私は七倉さんの声に。姿に魅了されて、声も出せない。



結果は七倉さんの圧勝だった。