薄暗い廊下を通り抜ける。
コケや蜘蛛の巣で天井は薄ぎたない。
そんな場所に女性のドタドタとした足音が響き渡っていく。

そんな足音に対して、黄色のエプロンがヒラヒラと華麗に舞う。
そして、美しい黒髪がサラサラ空中に浮かび上がる。
ここが薄汚い廊下でなければもっと美しく映えるのだろう。

廊下を抜けると一つのドアがある。
ドアノブのまわりだけは妙に綺麗にしてあり、この部屋には誰かが居ることがわかる。
女性はそのドアノブを白く細い手がひねる。

ドアを開け、まずは一発目のいつも言葉。

「おいこらぁぁぁ‼あんたまた隠れてロボットつくってんのかぁ!?いい加減にしやがれ‼」

甲高い女性の声が響く。
それは、ドアの先に居る眼鏡の30代男性に向けられたものであった。

「おぉ。」

のんきな男性の返事に女性の怒りが積もる。

「おぉ。じゃないよ‼3日も部屋にこもるんじゃない‼」

「そんなに怒るなって。早織、そんなに怒ると美人が台無しだぞ★」

「あんたのロボット研究のおかげでシワが増えるから台無しになるのよ‼」

「あんたじゃなくて名前で読んでほしいなぁ。嫁にはな♥」

早織は俯いてしまった。男性が見る限り彼女の顔は真っ赤だ。

「……ぅゃ」

か細い声が聞こえる。

「何々?もう一回♥」

「…しょうや!医療ロボットばっか作ってないでご飯食べに来なさいよ‼馬鹿‼」

そう言ってエプロンを着けた女性、早織が部屋を出ていく。

一人になった男性、しょうやはふとため息をつく。
「さて、可愛い嫁の飯でも食いにいきますか。」

そして、しょうやも時間をおいて部屋を出ていく。

しょうやの部屋には完成間近の……

これからある女の子のココロを、運命を変える人間型ロボットが残されていた…