男は早足になる。
それに追いつこうと、女の足も。
「涼太がさ、授業中にキスしてるとこ、見つけちゃった日。あたしが」
男は何も言わない。
「あたしの教室の窓から涼太の教室の中丸見えなんだよね。」
3年と2年の教室は南校舎と北校舎、
同じ4階で、窓から互いの教室が伺える。
「あたしさ、見つけちゃった時、すんごく羨ましかったの。」
俺はそんなことしてる自分が嫌いだ
「あたしも、授業なんか気になんないくらいの恋したいなーってね」
本当の恋に嫌気がさして、見かけだけの、行為だけの関係で心を埋めている。
それにあいつを利用している。
「だから、そんな「佐々木君」を誘ってみちゃったわけ」
この女はそんな俺の見かけに騙された。
「あれは恋とかじゃないんですよ」
「え?あの隣の席の子、好きじゃないの?」
「っていうか、恋人がいる男を平気でさそうんですね、土井先輩って」
俺だって恋人がいるとかいないとか、そんなにくだらないラベルは不要だと思う
「でも実際恋人じゃないんでしょ?」
「まあ。」
「涼太に恋人がいようといまいと、あたしはなんでも欲しければ自分の物にしちゃいたいの。買い物もそうでしょ?」
俺は物か。
でも、俺もこいつのことを言えない。
俺こそ、いろんな女を自分の寂しさを埋めるために利用して、ティッシュのように使い捨ててきた。



