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男は授業の終わった学校を後にし、
冬の夜道を歩いていた。
「涼太くーん、佐々木涼太ー!」
媚びた声で呼ぶ女は嫌いだ
「土井先輩」
その女は男に駆け寄り、首に手を回し抱きつく。
「ねぇ、今日デートしよお?」
「そうですね、いいですよ」
目を細めて笑う。
この笑顔は癖みたいに取れなくて、でも
取ってしまったら俺はどんな顔で人と話せばいいのか分からない。
「やった!じゃあじゃあ…」
この土井というのは、3年の先輩である。一つ年上。
はっきり言って面倒だ。
「遊園地とか言っちゃう〜?」
「それは今日はもう無理でしょう」
「じゃあ、ウチくる!?」
「…いいです」
「なんだよぉ、涼太くーん」
いちいち下の名前で呼ぶのも、
馴れ馴れしい。
もっとも、佐々木という名字も好きではないのだが。
「じゃあ涼太の家は?」
「うちは無理なんで」
「ぶー」
そういうぶりっ子な所が嫌い
「先輩、やっぱ俺…」
「ねぇ、あの日のこと覚えてる?」
「…なんですか」
嫌な話しの始まりはいつもうんざりする
「ちょーど3ヶ月前
あたしたちの、出会った日のこと」
思い出したくない、
最悪の記憶。



