普通に通ればいいんだ。
そう思ってドアの前まで行ったらドアが開いた。
まさかこのタイミングで開くなんて思ってなくて変な声が出る。
「桜……」
「かっ、海翔……」
しかも開けたのが海翔でよけいビックリする。
海翔もビックリしたような顔をして、パチパチと瞬きをしたあとにふにゃりと目を細めた。
「はいこれ。おばさんから預かってきたよ」
「あ、お弁当……っ」
差し出された海翔の 手には私のお弁当箱の包みが握られていて「ありがとう」と受けとる――はずだった。
「海翔、……っ」
それなのに海翔は包みを離してくれなくて、見上げれば昨日見た知らない顔。
知っているはずなのに知らない人みたいで不安になる。
「朝家に行ったらいないし、何でスマホの電源切ってるの?」
「それは海翔が私に嘘ついてるから……っ」
何で私が悪いみたいになってるの?
海翔が悪いんじゃない!
そう気持ちをこめて睨んだら海翔が包みをパッと離す。
「それじゃあ確かにわたしたからね」
「かい――」
海翔はそう言うと私が呼び止める前に教室のドアを閉めて中に戻ってしまった。
「何で海翔が泣きそうな顔するの……?」
呟くように言っても返してくれる人はいなくて。
泣きたいのは私のほうなのに意味が分からないよ……。
その後食べたお弁当は味気なく感じて、箸がすすまない私は由佳ちゃんに心配されてしまった。

