「ない……」
スマホの電源を切り続けているから海翔が教室に来るんじゃないかと思っていた私。
だけど海翔が一度も教室来ないままお昼になって鞄を覗いたらお弁当箱がなかった。
急いでたから忘れたんだ……。
自分の失敗にため息が出る。
「お弁当忘れたの?」
「うん。ちょっと売店行ってくるね」
私の席の前でお弁当を持って首を傾ける由佳ちゃんに私はごめんと謝って立ち上がり教室を出た。
お昼休みの廊下はわりと賑やかで、すれ違う人が袋や商品を手に持つのを見ると意外と売店に行く人が多いんだなあと思う。
だんだんと海翔のクラスが近づいて足が重くなる。
反対側から行けばよかったのにいつもの癖って怖い。
海翔に会いたくないって思うのは初めてかもしれなくて……っていうか何で私が気まずい思いをしなくちゃいけないの!?
そもそも海翔が隠してたのが悪いのに!
そう思い始めると悲しさとか気まずさとかより怒りたい気持ちが大きくなって足に力が入る。
そうだよ!
海翔が悪いんだから私がこそこそする必要ないし!