――クリスマスシフトは予想よりもずっと忙しかった。
次々ケーキを受け取りにくるお客さんに間違えないようにわたすことで精一杯。
他の人はいつもと変わらない笑顔でてきぱき接客していてすごいなと思った。
「桜ちゃん、外で彼が待ってるよ」
「え……?」
アルバイトが終わって事務室で帰る支度をしていたら店長の奥さんである真美(まみ)さんにそう言われて不思議に思う。
私には彼氏なんていないのに。
首を傾けていたら真美さんが「間違えた。幼なじみの男の子だったわね」とふふっと笑う。
「海翔が……!?」
「中で待ってたらって声をかけたんだけど、外で待つってゆずらなくて」
今日は一段と寒いのに外で待ってるの……?
海翔は私と違って風邪ひきやすいのに!
「早く行ってあげて」と笑顔の真美さんに「お先に失礼します」と返した私は急ぎ足でお店の外へ向かった。
「――海翔!」
お店を出て海翔の姿を探す。
海翔はお店から少し離れた所にコート姿で立っていてすぐに見つかった。
「何してるの!? 風邪どころかインフルエンザにでもかかったらおばさんが心配するんだから!」
気まずさよりも海翔の具合が心配で駆け寄ったら海翔はムスッと怒ったような顔をしている。