ぎゅ…


蒼井くんが私の手を握ってきた。




「っ…」


しばらく時間が止まったかのように思える…

心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかってくらいシーンとしてるし…





「ありがと…」

「う、うん」


しばらくしてそっと手を離すと、蒼井くんはお礼を言って更衣室を出て行った。



今の何だったんだろ…

よく分かんないけど…ドキドキが止まんないよっ…

まだ蒼井くんの手の感触が残ってる…


私は一人残された更衣室で、言葉にできない感情と戦っていた。












ゴボゴボ…

数週間後。今日はプールの水入れの日で、放課後私は学校のプールに来て水入れの様子を見ていた。





「あれ?1人?」


スタート台に腰掛けてプールを眺めていると、健くんがやって来る。




「あ、凪も一緒。今トイレ行ってる」

「そっか」


健くんは私の隣の台に腰掛けると、溜まっていくプールの水をぼんやり見ていた。





「…最近凪とはどう?」

「んー変わんない。子供の時からずっと変化なし?」


ハハと笑う健くん。




「俺はあいつが好きだけど…凪は違う奴を見てるしな。うまくいかないよ」


健くん…凪が蒼井くんが好きなこと知ってるんだ。




「ま、俺は気長に待つよ」

「…そっか」


立ち上がる健くんに私は笑顔を返した。

お互い頑張ろうと言っているようにも聞こえたから…