俺に溺れとけよ

「やっぱり来た…」

「…日課なんだ」


私に気づいてちょっとだけ微笑むと、蒼井くんは水泳キャップとゴーグルをつけ綺麗なフォームでプールに飛び込んだ。

そしてドルフィンキックからのクロールは、優雅でなおかつすごいスピード。

いつ見ても目を奪われる泳ぎに、私はプールサイドに腰を下ろして蒼井くんを見ていた。






バチャ…


しばらく泳いだ後プールから上がる蒼井くんは、キャップとゴーグルを取ると頭を振って髪の雫を落としている。肩に落ちる髪の毛の雫にドキッとしていると、蒼井くんがこっちに目を向けた。






「…何でいつも泳がないの?」

「えっ」


バレてる…誰も私の事なんて気にしてないと思ったけど、プールに来てただ足だけ浸かってる人なんてやっぱり怪しいかな。





「実はカナヅチで…」

「は?」


ここはうまく誤魔化して切り抜けようと思ったが、適当な嘘が思い浮かばず真実を言う事にした。

ストレッチをしながら蒼井くんがハハッと笑う。