「良かったら昼飯一緒に食お。…ほら、あの…」

「え?」

「…いいから来い」

「あっ…」


蒼井くんに腕を引かれやや強引に連れてこられたのは、裏庭のベンチだった。

そこに人一人分くらいの間隔を空けて座り、私は心臓をバクバク言わせながらお弁当を開ける。






「…あ、蒼井くん今日はお弁当?」

「ううん買弁。さっき売店で買った」

「そう…」


好きな人とお昼食べるなんて緊張するよ…マラソンやってお腹空いてるはずなのに今はそんなのどっか行っちゃったみたい…




「急に誘ってごめんな…」

「う、ううん!全然っ」


売店で買ったおにぎりを食べながら申し訳なさそうに言う蒼井くん。私もパクパクとおかずに口に運ぶ。





「…あーもう」

「えっ?」


しばらく沈黙が続いた後、蒼井くんはそう叫んで自分のカバンを開けて手を突っ込む。


どうしたんだろ…

今日の蒼井くんは蒼井くんらしくない気がするけど…






「これ…この間のお返し」


私から目をそらす蒼井くんは、私に透明の袋にラッピングされた物を差し出す。




「え、これ………」

「わかるだろ。バレンタインのお返しだよ」


恥ずかしそうにバクバクおにぎりを口に入れて、二つめを袋から開ける蒼井くん。




「…嬉しい。私に?」

「当たり前だろ」


透明の袋の中をよく見ると、苺柄の缶可愛いが入っていた。




「すっごいかわいい…」

「…苺味のお菓子の詰め合わせだって」

「本当に?食べるのも楽しみだし、食べ終わったら何入れようかなー」