俺に溺れとけよ

2人の泳ぎは力強く出会った時と比べたら断然良くなっているように見える…


とうとう明後日の夜かぁ…夏休みになってからあっという間だったな。

水泳部って夏しか大会がないから、この時期にぎゅっと凝縮して練習に励むし余計に気合いが入るよ。





「そろそろ上がるかー」

「おう…」


健くんのかけ声で水から顔を出す蒼井くんはキャップとゴーグルを外し、髪の毛の水を払う。

その仕草に何度ドキドキしただろう…

今日も変わらず蒼井くんが好き。






「明後日緊張してる?」


帰る支度をしながら私は2人に聞いてみると、蒼井くんがうーんと考えながら答えた。




「してないっていえば嘘になるけど…楽しみの方が大きいかな」


私だったら緊張しちゃっていてもたってもいられないのに、蒼井くんはやっぱりすごいなぁ…






「明日何時だっけ?」

「10時に駅集合だよ。会場東京だもんね~前日から行って明後日本番か」


久しぶりの東京だ。つい最近まで住んでたのに変な感じだな…


私達はプールの鍵を閉めて3人で帰りながら明日の大会の話で盛り上がる。すると、前から見覚えのある自転車でこっちに向かって来る人影が見えた。





「…見ーつけた」

「凪!?」


自転車に乗っていたのは凪で何やら怒っている様子。




「こんな時間に3人で何やってたの?」


怪しむ目つきで私達を睨む凪に、私達3人は一斉に目をそらして適当な嘘を考える。




「明日の事で美海に用があって家まで行ったらお母さんが出て「美海は蒼井くん達とプールに行きました」って。てっきりスポーツクラブかなと思って行ってみたら3人はいない。店長に聞いても今日は来てないって…ということは?」