俺に溺れとけよ

記憶と目の前にいるその人を照らし合わせて改めて見てみると、やっぱりいつもプールで見かけるあの男子だと思う。


同じ学校だったんだ。しかもここにいるってことは同い年だよね?





「ではこれから校庭の雑草取りをしてもらうぞ~各自靴を履き替えてグラウンドに集合♪」


張り切った感じの生活指導の先生は「ほらほら」と言って私達を職員室から出すと、生徒はだるそうに下駄箱に向かう。

プールで見かける男子を見ていた私も今の状況を思い出して下駄箱に行き、靴を履き替えてグラウンドに出た。そして先生から軍手を渡されて雑草を取り始めた。





「…」


各自仲のいい者同士が固まって作業する中、私は1人で黙々と草を取っていた。

手を動かしながら気になるのはやっぱりさっきのあの男子。彼は私から少し離れた場所でゴミ袋に草を入れている。




まさかここの学校の生徒だったとは思わなかったな…入学してから今まで見かけた事なかったし…

まあ、私が他の生徒のことあんまり見てないっていうのもあるけどびっくりだよ。






バサ…


すると突然後ろで物音がしてとっさに振り返ると、今まさに考えていたいつもプールで見かけるあの男子がゴミ袋を持って私の後ろに立っていた。




「草。ここに入れて」

「あ、は、はい!」


急に話かけられた私は足元に抜いてたまっていた草を急いでゴミ袋に入れると、プール男子がその場にしゃがみ込んで私のすぐそばの雑草を抜き始めた。