「ええっ、そーなの!?」

「何?健に何か用でもあったのか?」

「う、ううん…別に」


ということは…今日は私と蒼井くんの2人きり?





「鍵貸して」

「あ、うん…」


緊張して震えながら蒼井くんに鍵を渡して扉を開け、2人で中に入る。私はなるべく普通にしようと心がけながら振る舞うつもりでも、心臓がバクバク鳴っている。




バシャッ…

バシャ………



蒼井くんの泳ぐ水の音が響く中、私は膝を抱えてじっとそれを眺めていた。

この時間がすごく好き。蒼井くんといるとドキドキもするけど、どこか心地よくて落ち着くから…





「ちょっと休憩する」

「うん」


立ち止まってプールから上がる蒼井くんに、私はタオルと水を差し出した。

こんなふうに好きな人の世話が出来るなんて、マネージャーになって良かった。





「もうすぐ大会だな」

「そうだね。私は泳がないのに何故か緊張してるよ」


大会行くのなんて初めてだしね。





「ハハ。良かったら今少し泳いでみれば?教えてやるよ」

「え…でも……」

「いいから。ちょっと来て」


蒼井くんはタオルと水を置くとまたプールの中に入った。私はTシャツを脱いで水着姿になり、こわばりながらプールに入る。




バシャンッ…



「ひっ…」


プールの水は思っていたよりも冷たくて、体中が一気にヒンヤリする。

いつも足だけ入れてるだけからこの感覚忘れてたよ…





「まず水に慣れることからだな。少し水の中を歩いてみ」

「うん…」


言われた通り足を前に出して歩いてみる。水が体にまとわりついて変な感じがした。




「段々深くなるっ…」

「大丈夫、ほら」


歩くにつれて水かさが首の方まで迫って来て怖くなると、蒼井くんが私の両手を掴んでくれた。

恐怖なんて一気に吹っ飛び、きゃー!と今すぐにでも叫びたい気分だ。





蒼井くん手…大きいなぁ…

ゴツゴツしてるけど柔らかい…





「慣れてきた?」

「うん、少し…」


水には慣れてきたけど、今の状況には全然慣れません。ずっとドキドキしっぱなしだよ…