ザッ…ザッザッ…

シャーーー…


6月に入りプール開きが近くなった頃、水泳部の私達はジャージに着替えて学校のプールの掃除をしていた。

デッキブラシでコンクリート床を磨く私と凪。他の男子はプールの中を掃除している。





「ふぅ…」


額を手で拭いながら、黙々と掃除をする蒼井くんをチラッと見る。

Tシャツを肩までまくり上げていて、引き締まって汗ばんだ腕の筋肉が見えている。首にタオルを巻いていて今日は何だかいつにも増して色気があるように見えた。





「美海。見とれるのもいいけど手も動かしてよね」

「あ、ごめん!」


凪に注目され私は慌てて手を動かす。

彼女とはここ数日でかなり距離が縮まり、最近は毎日一緒にいるようになったし下の名前で呼び合う仲に。




「紡を見とれちゃうのはわからなくはないけどねぇ」


周りには聞こえない声で言ってクスッと笑い、凪はコンクリート床にホースで水をまいていた。


部活が一緒だということもあるが、私としては凪が初めての友達が出来たような気持ちになりとても嬉しく思っていた。好きな人もお互い同じなのに仲良くしてるなんて普通に考えたら変だけどね…






「休憩するぞー」


部長の一言で休憩することになり、私達は手を止めて屋根のあるスペースにみんなで固まって座る。





「6月でこの暑さかよ」

「早くプール入りたいね~」


それぞれ雑談しながら飲み物を飲み、私はまだ水をはっていないプールを眺めた。



夏はここで練習するのか…

学校のプールってワクワクしちゃう。私は泳げないけどね…





「美海~日焼け止め持ってたら貸して」

「あ、うん!いいよー」


カバンから日焼け止めを出して手渡すと、凪は腕や足にクリームを塗り始めた。





「女の子って大変だよね~俺なんか日焼けなんて全然気にしてないわ」


私に話しかけてくる川崎くんが、凪の使っている日焼け止めを見てポツリと言った。




「男の子はそうかもね。女子は日焼け気にするんだよ…黒いのとか嫌だし」

「俺達夏場はみんな黒いよ~でも紡は夏は海ばっかり行ってるくせしてそんなに真っ黒にはならないよな?若干焼けてるくらいで」