俺に溺れとけよ

「…うーん………そうなんだけど…」


蒼井くんの表情が少し変わった気がした。でもその変化が何なのかは私には分からなかった。

まだそこまで蒼井くんのこと知らないから…






「…部活くらいならいいかなって」

「…」


そう言うと、蒼井くんは水泳キャップとゴーグルをはめプールに飛び込むと今日も変わらず綺麗で優雅なフォームで泳ぎ始めた。

私は蒼井くんの泳ぎを眺めながら、さっきの表情を思い出しつつ水に足をつけてバタバタ動かす。






「早いわね」

「相馬さん」


ペタペタと足跡と声がして振り返ると、後ろにスクール水着の上にTシャツ姿の相馬さんがいた。





「先に来ちゃって良かったかな…マネージャーだから色々やることあった?」

「ううん…大会とかまだ先だしそれにまだ集合時間まで結構あるから大丈夫だよ」


ニコッと笑うと相馬さんは私の隣に腰掛けて、蒼井くんの泳ぎをじっと見つめていた。







「私ね…紡の事好きなんだ。中学が同じだったからその時からずっと…」


突然の告白に驚いて相馬さんを見ると、とても真剣な顔をしていてふざけているのでも嘘をついている様子もない。





「水野さんもでしょ?」

「え…」


相馬さんにそう聞かれて、今まで真剣に考えてなかったことに気がついた。それと同時に自分の気持ちがはっきりとわかった…



蒼井くんのこと…

いつの間にか好きになってたのに…ちゃんと認めてなかった…

あんなに一緒にいてドキドキしたり、かっこいいって思ったりしてたのに…





「…どうなの?」

「…え、えっと……」

「好きなんだね?」


私を見透かすような目で見る相馬さんに、私は顔を赤くしながらやや震えながら頷いた。