「まあそこは置いておいて…水野さんに頼みがあるんだけど…紡を水泳部に入るように説得してくれない?」

「え!?」


驚いた私は中庭に響く位の声を出してしまった。コホンと一息置いた後相馬さんは続ける。




「私達じゃいくら言ってもダメなの。紡は「水泳部なんて入らない」の一点張り…」

「どうしてだろう…」

「わからないけど…水泳部には紡が必要なのよ。大会には4人いないと出場出来ないの!それ以前に!!あんな逸材こんな田舎じゃ他にいないから是非うちの部に紡をっ!!!」


力強い口調と表情で言われて、強張る私なんてお構い無しに相馬さんは「お願い!」と何度も私に頭を下げた。




「そんなに入部したいなら相馬さんが頼めばいいんじゃ…」

「さっきも言ったでしょ?私や仲のいい友達でもダメなのよ。最後の頼みはあなたなの!悔しいけど」


唇を噛み締める相馬さんを見て私は疑問を覚えた。もしかして…相馬さんて蒼井くんの事が好きなのかな?




「よろしくね!じゃ」

「あ、ちょっと!!」


相馬さんはダッシュで中庭から出て行った。

何を言われるのかと思ったら…とんでもないことをお願いされてしまった。どうしよう…

私はしばらくその場で立ち尽くしていたらチャイムが鳴り、お弁当を食べる時間を逃して5時間目をサボった。









がやがや


その日の放課後。私はHRが終わるとダッシュで5組の教室の前に行き、蒼井くんを待っていた。

半ば強引だったけど相馬さんにお願いされちゃったし…話くらいはしておかないとね。多分ダメだろうけど…




ガラ…