俺に溺れとけよ

「奢らせて。ハンカチも濡らしちゃったし」


慌てて追いかけると蒼井くんは優しい顔をしてそう言った。私は悪いなと思いながらも「ありがとう」とお礼を言った。

蒼井くんは黒い長財布を手馴れた手つきで開ける。



かっこいい財布…

顔だけじゃなくて持ってるものまでイケメンに見えてくる(笑)





「あ…」

「どうしたの?」


財布の中身を見て固まっている蒼井くんを不思議に思っていると…




「小銭なかった。あと万札しかない…」

「…」


気まずそうな顔をする蒼井くんに私は必死に笑いをこらえた後、自分のカバンから財布を出した。




「本当ごめん…」

「いいよいいよ。蒼井くんは何飲む?」

「…じゃあコーヒー」


私はクスクス笑いながらコーヒーと自分のミルクティーを買い、缶コーヒーを蒼井くんに差し出した。




「悪いな」

「いいよ全然!気にしないで」

「…今度何か奢るから」


蒼井くんとの間に「今度」があると思うと、どこかウキウキしている自分がいた。私達はまた長椅子に腰掛けると、更に強くなる雨を眺めながら飲み物を開ける。