俺に溺れとけよ

「勿体ないっていえばお前だろ」

「へ?」

「泳げないくせに会員制のプールに通ってる」


クククと笑う蒼井くんに私はカァァと顔が熱くなり、恥ずかしなって下を俯いた。




「そうだよね…おかしいよね。おかしいんだけどでも…本当にプールは好きなの」

「不思議だな」

「うん…昔から水に触れるのは好きだったんだけどどうしても泳げなくて…夏生まれだし名前も美海なのにね…」

「ハハハ」


声を上げて笑う蒼井くんにまたドキドキしてしまう私は、恥ずかしい気持ちを押さえてハハと控えめに笑う。


男子でこんなふうに話すのって陸以来はじめてだな…当然陸と話す感じとは違うけど、蒼井くんと話すと楽しいかもな。

どっちかって言うと男子って苦手なのに不思議…





「あ…なんか飲む?傘貸してくれたお礼に奢るよ」

「えっ…いいよ!私出すからっ」


立ち上がって待合所の中の自販機に向かう蒼井くんは、飲み物を選びながら制服のポケットから財布を出す。