俺に溺れとけよ

「私ので良かったら入って。それと…髪とか拭いた方がいいよ」


カバンからハンカチを出して差し出すと、蒼井くんはキョトンとした顔をする。




「どうしたの?」

「ハンカチ持ち歩いてるんだなと思って…」

「…そりゃあ一応ね」

「ふーん…」


何か言いたそうな顔の蒼井くんに、私は「何?」と問いかけた。





「意外だな」

「え!なぜ?」


私ってハンカチとか持ち歩くタイプの女に見えないってこと!?それって=だらしないってことかな?




「冗談。ありがとう」


クスッと笑って私からハンカチを受け取る蒼井くんは、傘の下で顔や髪をさっと拭いた。



ザザザーーーーー………

ゴロゴロ……



「雨強くなってきたな」

「雷も鳴ってない?」


突然雨風が激しくなり、空が光るとどこからかゴロゴロと雷の音がする。






「…そこの待合所で雨宿りでもする?」


蒼井くんが指さしたのはバス亭の横にある古い待合所で、屋根があり雨宿りにはちょうどいい場所だった。