あんなに練習してたのに…

自己記録だって更新して順調だったのに…


私が全部壊したんだ…






「バカ。大会には出るよ」

「え…」


紡は私から離れると、近くの椅子に腰掛けて松葉杖を横に置いた。





「ちょっと痛いけど平気…松葉杖なくてもギリ歩けるしそれに大会の時だけなら泳げるよ」

「でも…」

「いいんだ。多分優勝は出来ないけど…高校最後の大会は絶対出たいから、それだけで充分」


ニコッと微笑む紡の笑顔を見て、また涙がこぼれ落ちた。



こんなことを紡の口から言わせてしまった…


本当にごめん。

ごめんなさい…






「だからもう気にするな。もし怪我したのがお前だったら…その方が俺はダメだった気がする。自分を責めて大会になんて出れなかったよ」

「紡…」

「それに…務の気持ちがちょっとわかったよ。昔事故に遭った時…そういえばあいつも今俺が言った事と同じ事言ってたの思い出した…「もし怪我した方がお前だっ たらその方が俺はダメになってた」って」



紡は昔の務さんの事故の事を思い出してるんだ…

また涙が出た…





「本当にごめんなさい…」

「もう謝るな…」


椅子から立ち上がり足を庇うように歩いて来て私に近づくと、紡は私に優しく抱きしめた…