その日の帰り道。
電車の窓には無数の水滴の筋が入り乱れている。
雨は夜になっても降り続けた。
電車を降りる。
いつもより暗く感じるのは、雨のせいだろうか。
傘から少しはみ出ていた左肩が冷たい。
部活は予想通りの筋トレだった。
正直、筋トレのときマネージャーの仕事は少ない。
見ていても少しも面白くない。
だからわたしは雨がキライ。
明日は晴れるかなー
なんて思いながら改札を出る。
確か今日トシはバイトだったはず。
だからきっといつもの場所で待っててくれているだろう。
そう思ってコンビニでちょっと高いプリンを買ってカバンに忍ばせてある。
16年も幼なじみをやっていると誕生日プレゼントなんてそんな些細なものになってしまう。
でも、大事なのは気持ち。
…ってわたしが勝手に思ってるだけだけどね。
「あれ?いない」
いつもの場所に、いつもの背中がなかった。
忙しくてあがらせてもらえなかったのかな。
いつもなら気にせず帰ってしまう。
でも今日はトシの誕生日。
特別な日だからたまにはわたしが迎えに行こう、
そう思ってトシのバイト先へ向かった。
ってかトシ、自分の誕生日なのにバイトしてるなんて
バイト好きすぎでしょ。
そんなことを思いながら、歩くこと3分。
バイト先のコンビニの前。
見慣れた制服。
トシ!
そう叫んで手を振る、つもりだった。
でも、挙げかけた左手を静かにおろす。
コンビニの明かりに照らされた2つの影。
トシと、トシと同じ制服を着た、女の子。
わたしの知らないトシが、
そこにはいた。