蝶たちは悠を全く警戒する様子もなく、頭の上や肩の上を、ひらひらと舞ってはとまり、舞ってはとまる。
まるで、彼と蝶が戯れているように見えた。
彼の周りだけ、空気がより優しく、温かくなっているようで、そこに踏み込むことはためらわれた。
そうしてぼーっと見つめていると。
「大丈夫だよ、霧子。こっちにおいで」
手招きをされてしまった。
「逃げちゃうんじゃない?」
「大丈夫。霧子は悪い子じゃないって、説明しておいたから」
「せ、説明?」
蝶に説明するとか……悠って、ちょっとイタイ人かも。
「言葉で話すわけじゃないけど、なんとなくお互いの気持ちを感じるんだ」
ああ、やっぱり……ちょっとアレかも。
悠の異常さにビクビクしながらも、非日常の事態にあってドキドキしている自分がいた。
ちょっと異常だけど、テロ事件よりよっぽどメルヘンで楽しいじゃない。
思い切って一歩踏み出す。
けれど、悠の周りを舞う蝶は逃げたりしなかった。



