「家にいるとさ、ドラマみたいに借金取りが来るんだよ。その足音が遠くから聞こえると、妹と裏口から抜け出して公園に向かった」
顔を上げて見た悠の横顔は、いつもと同じ微笑みをたたえていた。
「外から近づいてくる足音って聞こえるものなの?」
「ああ、俺ってすごく耳がいいんだ。ほとんど犬並」
「ウソでしょ」
「人って怯えているとさ、敏感になっちゃうんだろうね。小さいころに鍛えられたみたい」
ということは……悠は子供の頃にいつやってくるかわからない借金取りの足音に怯えているうちに、音に敏感になってしまったということ?
「大変だったんだね……」
「冬は特にね。めっちゃ寒かったな~」
公園でぽつんと二人でたたずむ、薄着の子供を想像すると、ちくりと胸が痛んだ。
悠は、私なんかよりも辛い思いをしてきたんだ……。
「結局両親は蒸発しちゃって、妹と二人で施設に入れられて……って、ごめん。こんな話、面白くないよね」
照れたように笑う悠。



