「母は兄弟もいなかったし、天涯孤独になっちゃった私は、二人の遺影を前にして途方に暮れてたの。そのとき、突然知らないおじさんが現れて、自分が父だと名乗ったの」
それが当時まだ一般議員だった父だった。
「父は途方に暮れてた私を養子にし、公邸に招いてくれた。お小遣いもたっぷりくれたし、大学にも行かせてくれて、教員になりたいという夢を応援してくれた」
義母や義兄の私に対する風当たりはあの頃から暴風警報が出るくらい強いものだったけれど、それも仕方ない。
どこの世界に、旦那が他の女に産ませた子供を歓迎してくれる妻がいるだろう。
雨風をしのげる家があって、学校にも行ける。それだけでじゅうぶんだった。
それに、私には教員になって自立するという夢もあった。
「でも、夢を叶えて少ししか経っていないのに……こんなことになっちゃうなんてね」
政略結婚を受けたのは、父に恩があるから。
あそこで父が手を差し伸べてくれなかったら、今頃私はどうなっていただろう。想像すると恐ろしい。



