強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】





「って言うか……外をうろうろしても大丈夫なの?」


デニムワンピを着て悠と一緒に部屋を出ると、ドアの前に高浜さんでも新城さんでもないSPが立っていた。

この人覚えてる。学校にテロリストが入り込んできたときにいた、髪の短い精悍な顔つきの人だ。


「矢作さん、ちょっと散歩に行ってきます」


声をかけられた矢作さんは、こちらをにらむように見つめる。


「はあ?」

「すぐ帰ってきます。無茶はさせませんから」


なんか……病院に入院しているおばあちゃんになった気分。

ただの散歩でも、ひとりではどこにも行けないというね……。


「まあ、まだ昼前だしな」


矢作さんは時計を見て呟く。


「じゃあ、宿泊者専用の庭のみ、三十分以内に戻ること。俺と高浜さんが庭の入口二箇所で見張る。それでいいか?」

「じゅうぶんです。ありがとうございます」


意外にあっさり外出許可をくれた矢作さんは、スマホを取り出した。

たぶん、他のSPと連絡を取りあっているんだろう。

彼が距離を開けてついてくるのを横目に、悠は私の隣に立って、庭へと案内する。