強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】



「……どうしたの?」

「ううん……」


こんなにたくさんの傷を負っているなんて。

悠はSPになってから、どんなに怖くて痛い思いをしてきたんだろう。


「……痛かったでしょう?」


いつだって平気な顔で笑っているけれど、悠だって苦労して生きているんだ。

色々なことがありすぎて、まるで自分が世界で一番不幸な人間のような気がしていた。

けれど、実際にはそうじゃない。全然不幸なんかじゃなくて、ただしんどいだけ。

私は周りに甘えて、駄々をこねている子供と一緒だ。

この人の方が、きっと毎日しんどいに違いないのに……。


「……ありがとう」


頭の上で悠の声がした。と思ったら、次の瞬間には頭を撫でられていた。優しく、いたわるように。


「大丈夫だよ。体の傷はふさがるから」

「でも、こんなに跡が残ってる」

「それでも心に残った傷跡よりは、痛くない」


心に残った傷跡……。

そっと見上げた悠は、やっぱり春の陽だまりのような笑顔で微笑んでいた。