「やめろ、お前たち」
という父の声にはハリがない。
当たり前だ。こうしてもめるのは、自分が原因なのだから。
父が不倫なんてしなければ、良かったんだ。
「まあまあ。父上が立場のある方ですから。政治的要因が絡んでいるのでは、と警察は見ています」
篠田さんが咳ばらいをしてそう言うと、突然スマホの着信音が鳴った。
その場が静かになると、篠田さんがポケットから取り出したスマホを耳にあてる。
「俺だ。なんだ……ん?」
そのまま篠田さんはふむふむと相手の話を聞き、一言二言何か言ってから、電話を切った。
それを机の上に置く音が、やけに大きく響いた。
「今、連絡があったのですが」
ごくりと唾を飲み込む音が聞こえたような気がしたけど、誰のものかはわからない。
静かに待つ私たちに、篠田さんは淡々と告げる。
「警察に、犯人かどうかは断定できませんが、今回の件に関してメールがありました」
「なんと?」
「ただ一言、『藤沢霧子と八乙女篤志の結婚を取りやめろ』と書かれていたそうです。今、送信元の特定を急いでいます」



