篠田さんが冷静な顔で父に伝えていると、背後から「公安って、他にいないのかよ」と不満そうな声が聞こえてきた。
「とにかく座りなさい、霧子」
篤志さんの隣は嫌なので、篠田さんの隣をひとつ開けて座った。
悠と、一緒に来た高浜さんは当然座ることはない。
悠は私の背後に、高浜さんは部屋の入口に立っていた。
「さて……じゃあ、今回のテロ事件についてだが」
父が口を開くと、使用人がやってきて、私の前に湯気の出ているコーヒーを置いた。
砂糖とミルクを入れ、それに口をつけようとすると……。
「あ、ちょっと待って」
悠が背後から身を乗り出し、私からカップを取り上げた。
「何をする」
篤志さんが不快そうに眉間にシワを寄せる。
その間に、悠はコーヒーを一口、飲んでしまった。
「毒見です。大丈夫、飲んでいいよ」
って、あなたが口をつけたカップを返されても……。
恋人どうしなら、缶コーヒーのやりとりくらいは普通にするだろうけど、この状況はどうしたらいいのか。



