「でも、今更全部なかったことになんて、できない」
そう言うと、涙がぽろぽろと零れた。
「そりゃあ、何の痛みも受けずに全部チャラってことにはならないし、色んな人に迷惑かけるだろうね。でも、あきらめちゃダメだよ。だって、これからの霧子の人生がかかっているんでしょ?」
お願い、もうやめて。気づきたくないの。
自分で決めた結婚が、自分を不幸に手招きしているかもしれないなんて。
「ダメもとで頼んでみようよ。キミのお父さん、日本で一番偉い人じゃない。お金も持ってる。なんとかしてくれるかもしれない」
偉くなんかない。
権力なんてもろいものだってわかっているから、がんばって派閥のつながりを強めようとしているんでしょ?自分の娘を使って。
考えれば考えるほど、バカバカしくなってきた。
「やめたい……」
「ん?」
「こんな結婚、やめたい。まだお仕事したい。まだ、いない、けど、好きなひとと、普通の結婚がしたい……」
子供みたいにしゃくりあげてしまって、言葉が途切れた。
だけど、そんな私の頭を、悠がそっと撫でてくれる。



