「お前みたいな弱そうなのに、霧子が守れるか」
「『弱そうなの』はひどいな。見た目で判断しないでくださいよ」
悠はポキポキ、と漫画みたいに手の骨を鳴らしてみせた。
さっき手首をひねられた感触が残っているのか、篤志さんが顔を歪める。
「むう……霧子、とにかく一度公邸に戻ってこい。事件について、総理と話し合う必要があるだろう」
「は、はあ……」
「総理の予定を確認したら、また連絡する。きちんと婚約指輪をしていろ。いいか、絶対に油断するなよ。SPといえど、そいつは男だからな。信用するな」
そう言い残して乱暴にドアを閉め、篤志さんは去っていった。
「はあ……短気な旦那さんだね。いや、嫉妬深いのかな。とにかく奥さん、大変ね」
なぜかオネエ言葉で言う悠に、腹が立った。
「まだ奥さんじゃない!」
そりゃあ、悠にしてみれば完全に他人事だからいいでしょうよ。
でも私は、実際にあの短気な男の元に嫁がなきゃならないんだ。
大好きな教師の仕事も辞めて、あの男の顔色をうかがいながら、気の進まないセックスをして、毎日を過ごさなきゃいけないんだ。なんて惨めなんだろう。
そう思ったら、目頭が熱くなった。



